先週、二胡の先生に
「来週、病院に演奏に行くんだけど、どう?」
と声をかけられ、いつもの如く二つ返事でOKしてしまった。
何を演奏するかも知らないのに、OKするなんて私もずいぶん偉くなったものだとちょっと感心?したり、人に聞いてもらうのにそんなに軽い気持ちで引き受けて大丈夫なのか?と浅はかな自分を戒めたり、、、。
(まあ、毎日練習している曲が多いだろうから、何を演奏することになっても一応は大丈夫だろうとは思ってはいましたが。)
今年4回目の演奏。
私も、少し場所や雰囲気に慣れてきたようだ。
いつもは緊張してあっという間に時間が過ぎて演奏が終わるが、
今回はいつもと違い、周りの様子や演奏中のことが少し見えたような気がする。
私は、この年になるまで、ほとんど自分から音楽を聴いたことはない。
きっと同世代のみんなが「懐メロ」と呼ぶであろう曲は、ほとんど歌えない。
曲が流れ始め、「何だこの曲は?」に始まり「うん?聞いたことあるかも?」となり、サビの部分が終わりかけた頃になってやっと「ああ、聞いたことある歌だ」と思うだけである。
特に自分から聴いていないので、懐かしくもないし青春の思い出が蘇るようなこともない。ただただ、聞いたことがあるレベルの歌というだけだ。(今となっては、好きな歌がなかったということを少し寂しくも感じるが、、、。)
まあ、それはいいとして(笑)。
お年寄りは、懐かしい(だろう)曲を演奏すると、自然と歌を口ずさんでいる。もちろん私のように音楽に興味がなかった人もいるだろうが、多くの方が歌うのである。
(いろんな方がいろんな楽器の演奏をしに訪問しているだろうから、それに合わせて歌い慣れているのもあるだろう。)
皆さんそれぞれに体調や調子の悪いところがあろう中、それぞれに歌うのである。
それは、大きな声ではない。はっきりした声でもない。
今出る可能なの声。
けっして「声を張って」とか、「艶のある声で」とかではなく、声に出したくなって自然にでる声。
ハミングのようでもあり、そうでもない。何とも言えない心地よい声・音の響きが室内を包み込む。
楽器の演奏を眺めながら曲を聴きながら、昔を思い出す方もいるのだろう。何だか自分の人生を思い返すような、幸せなような、または何かをかみしめるような目で見つめている。
僕は、最高に美しい歌声・景色だと思った。「歌声」というだけでは言い表せない、なんというか最高に温かい空間・時間であった。
私とはもちろん世代が違うし、それぞれ経験してきた過去の量も重さも違うお年寄り方。同じ空間で、同じ曲を、お年寄りが気持ちよく声を出せるように、お年寄りに無理のないよう息づかいに可能な限り合わせながら、演奏をした。思いは人それぞれではあるが、一体となれたという実感を持つことができた。
今まで、そんな経験が私にはなかったから、余計に思う。これが、一緒に奏でるということか。音楽っていいものなんだな。
今まで、音楽を聞きもせず、楽器の演奏もしてこなかった私には、とても貴重な体験だった。
また訪問させてもらい、一緒に楽しみたい、この時間を共有したいと思った。もっとたくさんのお年寄りが懐かしめるような歌を練習して覚えようと思った。